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前回の記事で論理の取り扱いを酷く誤った議論がスッと通ってしまっていることに個人的に危惧しているということを書いた。今日はその捕捉をする。
あるポピュラーな経済誌に投稿した記事にリンクを張っている著者のTwitterアカウントから飛んでその記事を読ませていただいた。
論旨は「日本の預金残高は超弩級でまさに異常値であり,そのことが資金流動性を停滞させている一因とも言える。もはやゼロ金利政策にもあまり効果は期待できない。そこでまずは預金者が預金を現金化するよう誘導する必要がある。その施策として預金金利に課税する方法がある。」というもので、傾聴に値するものだった。
しかし、論文ではなく一般読者向けだからということかも知れないが、その論理展開がいささか乱暴になってしまっているのが気になったということだ。
いちいちあげつらうのは趣旨ではないので、一例を挙げると;「じゃあ預金を下ろして現金化したからといってそのままタンス預金になってしまうのではないか、という恐れは無用だ。」という説明をする部分だ。
「むかしある消費者金融の店長から聞いた話だと、10万円必要だと言う客には50万円貸し付けるという。そうするとその客は必要な10万円だけではなく貸した金50万円全部を使ってしまいまた借りに来るという。人間というものは手元に現金を持っていると使ってしまうものなのだ。だから消費に回る可能性は極めて高いのだ。預金の利子に課税することによって預金意欲を減じれば手元に現金が残る。手元に現金があればひとは消費してしまうものだから、それは個人消費の回復につながるというわけだ。」
まあ乱暴にまとめるとそんな論旨だった。この部分のいけないところは、「消費者金融の店長の世間話としての経験則を消費者心理の法則に置き換え、利子課税の効果の論拠としている」点だ。
フィールドワークとしてモデル構成をしっかりとして、聞き取り調査したものならまだしも、たったひとりの経験則を法則にすることはできない。それは法則をなすための必要条件は満たすが十分条件は満たしていない。
そのように妥当性を欠いた手法で成立した法則を、こんどは「預金の利子への課税という施策の効果の論拠とする」ということも、社会科学としての論理実証性をまったく書いている議論といわざるを得ない。
知っているひとは知っていると想うけれど、むかし「こまわり君」というコミックを書いた山上たつひこ氏の「あるぷす犬坊」が道行く女子高生に二階の窓から投げかけるこんなナンセンスなセリフに似ていなくもない:
「お〜い、そこのねーちゃん、遭難するぞ!遭難したとき頼りになるのはバーナードだ。だからいまのうちにバーナードの機嫌をとっておいたほうがいい。」(バーナード=セントバーナードの山岳救助犬のことをいっている)
これは批判ではなく、指摘に過ぎない。一般読者向けに限られた紙幅で論じる困難はいかばかりだろう。しかしだからこそ致命的に論理的整合性を欠いた表現は断じて避けなければならない。それがプロではないかと感じたわけです。
☆たてしなラヂヲ☆
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