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4399 ほの暗い森にて(2)


別荘の管理事務所や郵便局

土産物屋や共同温泉浴場

広い駐車場


そんなものが整備された場所から

遊歩道に入り

ほんの数十メートル進んだだけなのに

そこはもう

全くの別世界だった


道の右手から左手に下る斜面の

ちょうど中程を

遊歩道は貫いている


右手に小さめの石を積んだ

土留めの石垣が

苔(こけ)むした斜面を構成し

左手はすとんと落ち込む斜面に

多数の樹木が密生していた


その多くは赤松やシラビソやカラマツ

そして広葉樹の白樺やダケカンバであり

その下にはナナカマドの紅葉が

蛍光オレンジの光を放っていた


光を求めて

彼らは空間を奪い合っていた


他の樹木を迂回するように

幹は曲がりくねり

水平方向に長く枝を伸ばして

絡み合うその姿は

理屈を越えたおぞましいばかりの

生への執念を感じさせる


道の表面に浮き出て

のたうつ根も

また

ぞっとさせるような気迫に

満ちていた


戦いに敗れ

枯れて倒木となり

朽ち果てた巨木の根が

1メートルほどの高さを残して

道の真ん中に残っていた


その造形美に惹かれて

思わずシャッターを切る

信じられないほどのスローシャッターだ


どんなに暗くても

僕はフラッシュを使わない

三脚も使わない

だから全神経を集中して

撮影に没頭した


写真を撮り終えて

ふと気づくと

その一角だけが

異様に寒く感じる

周囲の世界から隔絶された

別の時空間のように感じられる


かれらは

僕が森を出るころ合いであることを

警告していた

たしかに

あたりはもうすっかり闇に支配されていた


その時初めて

間近に渓流の音があることに気づく

浮き出た木の根と

ぬれた落ち葉が

足もとをおぼつかなくさせている


こんな時間に

こんなところで怪我をしてしまったら

一夜をここで過ごさなければならなくなる


彼らは正しかった


しかし

足早に森を抜けて

遊歩道を入口まで戻ると

そこにはあまりにも鮮やかな

夕景があった


まだ日は暮れていなかったのだ


(つづく)


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2008年11月14日 23:11に投稿されたエントリーのページです。

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